孤独死した部屋は、特殊清掃が必要になることがほとんどです。遺体の状態によっては、高額な費用になることも少なくありません。しかし、借り主が孤独死した場合、部屋の特殊清掃費用は誰が払うのでしょうか。
今回は、孤独死の特殊清掃費用の支払いについて解説します。
孤独死した部屋の特殊清掃費用は、借り主の連帯保証人・相続人・大家や管理会社の順で支払い義務が生じます。ただ、亡くなった状況によっては責任を負う人が変わってくるため、把握しておくことが重要です。
相続放棄したケースなども合わせて解説していきます。特殊清掃費用でお困りの方は参考にしてください。
特殊清掃の費用は借り主の相続人や連帯保証人が支払うのが基本
孤独死の特殊清掃費用は、まず借り主の連帯保証人に責任が生じます。連帯保証人とは、賃貸で部屋を借りる際に必要で、親族がなるケースがほとんどです。家賃を滞納した場合のみ責任が生じる保証人とは異なり、連帯保証人は借り主と同等の責任を担います。
ただし、連帯保証人に連絡がつかない、払うお金がないまたは意思がない場合、次に責任を問われるのは法定相続人です。
法定相続人とは、民法で定められている人をさし、配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の場合は、子ども・親・祖父母・兄弟姉妹の順に相続人となるのが一般的です。子どもが亡くなっている場合は、親よりも先にその子どもの子、つまり孫が責任を負います。
法定相続人は、相続を放棄することで財産はもちろん借金などの負の遺産も放棄できる決まりです。そのため、遺産放棄することで特殊清掃費用の負担を負う必要もなくなります。
なかには連帯保証人と法定相続人を兼ねているケースもあり、その場合は相続を放棄したとしても連帯保証人の責任は消えず、原状回復義務が発生します。
このように、特殊清掃費用は借り主の相続人や連帯保証人が支払うのが一般的です。
【ケース別】特殊清掃の費用はどこまで負担する?
特殊清掃費用の負担範囲は、借り主が病死や事故死などで孤独死した場合と自殺で死んだ場合で対応が異なります。それぞれ、詳しく解説します。
病死による孤独死の場合
病死や自然死などによる孤独死は予期せぬこと、つまり誰にでも起こりうることとみなされ、連帯保証人や相続人には損害賠償責任はないとされるケースがほとんどです。ただし、故意ではない孤独死でも賠償責任が生じた例もあるため、状況にもよります。
責任はないと認められた場合、 孤独死の特殊清掃費用は大家である貸し主が支払うのが一般的です。ただし、死後日数が経過しており、大規模な特殊清掃が必要となった場合は、話し合いによって遺族が費用を負担する可能性もあります。
自殺やゴミ屋敷状態になっていた場合
自殺やゴミ屋敷状態の部屋は故意とみなされることが多く、連帯保証人や相続人に損害賠償責任が生じます。そのため、原状回復のための費用の支払い義務が発生し、特殊清掃費用を負担しなければなりません。
また、清掃以外にも自殺の状況次第では心理的瑕疵物件などの損害賠償に発展するケースもあります。借り主が負担すべき損失は、すべて法定相続人または連帯保証人が対処しなければなりません。
特殊清掃の費用相場
特殊清掃の費用は、亡くなり方や遺体発見までにかかった日数によって大幅に変わります。清掃内容や原状回復工事の程度によっても異なるため一概にはいえませんが、大体の相場は50,000〜800,000円前後です。
このように費用相場に幅があるのは、故人の状態によって大きく左右されるためです。どのような理由で亡くなったのか、亡くなった場所、部屋の間取り、時期、遺体の状態など、さまざまな要因によって費用が変わります。
体液や血液が床や壁紙に染み込んでしまった場合、専用の薬剤を使用したり、床や壁の張り替えをしたりする必要があります。強い腐敗臭が残っている場合は、高度な機材を用いてオゾンによる消臭が必要になるため、これらが費用がかさむ原因です。
作業内容ごと費用相場は、床上清掃40,000円~、浴室清掃50,000円~、消臭剤・除菌剤の散布は15,000円~、汚れた畳の撤去は一枚あたり3,500円~、オゾン脱臭は一日あたり50,000円~です。
オゾン脱臭や原状回復工事を依頼すると料金は高くなります。遺品の回収も依頼すればさらに高額になるため、どこまで原状回復してもらうかよく検討しましょう。
【大家・管理会社向け】相続人や連帯保証人が不在の場合は特殊清掃費用は誰に請求する?
借り主の相続人や連帯保証人がいない場合、大家である貸し主や不動産管理会社が費用を負担しなければならないのでしょうか。チェックすべきポイントを解説します。
家賃保証会社や火災保険を確認
まずは、家賃保証会社や火災保険の内容を確認しましょう。損害保険会社が販売している火災保険、または家財保険の特約として孤独死保険が付帯されていることがあります。名目は孤独死保険ではなく、家主費用特約や家賃収入特約など異なる名前がついているため注意が必要です。
補償内容は各商品によって異なりますが、基本的には原状回復費用・ 遺品整理費用・ 家賃補償などがカバーされています。自殺や他殺など孤独死以外の場合も適用されるため、加入している保険を今一度確認してみましょう。
自己負担しなければいけないケースもある
病死や自然死の場合、基本的には借り主の故意ではないため特殊清掃を含む原状回復費用は大家である貸し主が負担する必要があります。自殺や他殺とは判断が異なるため、遺族に原状回復費用を請求できる可能性は低いのが現状です。
ただ、どの程度の原状回復を遺族が負担するか、費用は誰が支払うかを話し合うことは可能です。貸し主がひとまず特殊清掃を依頼し、あとから遺族に請求することもできます。
原状回復費用をどこまで負担するか話し合う際は、ガイドラインを参考にすると良いでしょう。話し合いで決まらなかった場合は、裁判を行なうことになります。
ただし、連帯保証人と法定相続人のどちらにも連絡がつかない場合は、貸し主が処理を判断するしかありません。近隣のことを考慮すると放置しておくわけにもいかないため、自然と貸し主が費用を負担することになるでしょう。
孤独死保険の加入で自己負担を防げる
上記のように、特殊清掃費用を連帯保証人や相続人に請求するのが難しい場合、孤独死保険に加入しておけば自己負担を防ぐことが可能です。
孤独死保険とは、孤独死が発生した場合に必要な費用の補償を目的とした保険です。少額短期保険業者が提供している孤独死保険には、家主型孤独死保険と入居者型孤独死保険の2種類があり、大家である貸し主が直接補償を受けられるのが家主型孤独死保険です。
家主型孤独死保険は保険料の負担がかかりますが、孤独死があった場合の遺品整理・ 原状回復・ 家賃損失を補償してもらえるためメリットが大きいのが特徴です。入居者型孤独死保険は家賃損失をカバーしていないことが多く、家主型孤独死保険のほうが手厚い補償を受けられます。
まとめ
今回は特殊清掃費用を誰が払うのかについて解説しました。
基本的には、借り主の連帯保証人や相続人が責任を負うことになります。必要以上の請求を受けないように、過去の判例や原状回復のガイドラインなどを参考にしてください。
連帯保証人や相続人がいないなどの理由で責任を負うことができない場合は、大家である貸し主が特殊清掃費用を負担することになります。ただ、遺族との交渉は可能なため、お互いに納得できる費用を提示して話し合いの場を設けましょう。
もし、自己負担になる場合は、孤独死保険の利用が可能です。火災保険などの特約として加入しているか確認しましょう。もし未加入の場合は、保険費用の支払いは生じますが万が一に備えて加入しておくのがおすすめです。