特殊清掃はどのような服装・道具を準備して行なう?

特殊清掃とは、孤独死などによって生じる、現場の汚れをきれいにする仕事です。一般的な清掃とは異なり、感染症のリスクがあることから、特殊な服装で清掃を行ないます。

また、掃除する対象も吐血や糞尿といった汚染物が多く、通常の掃除道具だけではきれいにしきれません。清掃するためには服装だけではなく道具にもこだわる必要があります。

特殊清掃では、どのような服装や道具が使われるのか、必要な理由と合わせて紹介します。

目次

基本的な特殊清掃の作業時の服装

特殊清掃の現場は、血液や汚物、ウジ虫などによって汚染されており、そのままの服装では作業ができません。自身への感染防止や感染の拡大を防ぐためにも、特殊な服装で作業する必要があります。

防護服

特殊清掃の現場では、ウイルスや病原菌による感染を防ぐため、全身を覆う防護服を着用して清掃作業を行ないます。

清掃現場では、血液や腐敗液といった、いわゆる汚染物が広がっています。汚染物からはウイルスや病原菌が発生しており、万が一服に付いた状態で外に出てしまうと、ウイルスや病原菌を外に持ち出され、感染が広がってしまうでしょう。

そのため、感染を広めないよう、特殊清掃では汚れが付かないような作業が求められます。

ですが、常に気を付けていても、付着を完全に防ぐことは難しいです。そこで、使い捨てとなる防護服を着用します。防護服を着用すれば、万が一付着しても、脱いで処分することで感染拡大を防げるでしょう。

自分が感染するのを防ぐだけはなく、感染を広げないためにも、防護服は必要不可欠といえます。

ちなみにですが、腐敗液が防護服に浸透するのを防ぐため、防護服は防水・耐油機能が備わっています。そのため、防護服内には熱がこもり、夏場は特に暑いです。

熱中症を防ぐためにも、夏場の暑さ対策は欠かせません。

防毒マスク

ウイルスや病原菌のなかには、空気感染するものもあります。清掃現場で普段通り呼吸をすると、空気中に漂うウイルスや病原菌を吸引してしまうため大変危険です。

そのため、ウイルスや病原菌を吸引しないよう、防毒マスクを着用して作業を行ないます。防毒マスクに装着されたフィルターによって、装着者をウイルスや病原菌から守ってくれます。

また、防毒マスクには悪臭対策の目的もあります。清掃現場では、腐敗臭をはじめとした悪臭が強く、防毒マスク無しでは作業は困難を極めます。

ウイルスや病原菌、さらには悪臭から身を守るためにも、特殊清掃に防毒マスクは欠かせません。

保護ゴーグル

防護服や防毒マスクだけでは、目元を覆うことができません。汚染物や薬剤が目に入ると、感染や失明のリスクがありとても危険です。

そのため、目を守るための保護ゴーグルも必要になります。

手袋

清掃現場は、汚染物によって汚れています。感染のリスクがあるため、素手のままでは清掃作業は行なえません。万が一怪我をしてしまうと、その怪我や傷から、感染をしてしまうからです。

汚染物に直接触らないためなのはもちろん、怪我による感染を防ぐためにも、手袋は必要となります。

また、清掃作業には防水・耐油性の手袋が用いられます。腐敗液には、人間の脂肪(油分)が含まれていることが多く、一般的なゴム手袋では浸透を防ぐのは難しいです。

他にも、肘まで覆うタイプの手袋を使用することで、より作業者の安全を守りながら、清掃作業が行なえます。薄手の手袋の場合は、重ねて使うとより安心です。

シューズカバー

防護服は足元も含めて防護しますが、作業時間が長いと、足元がすれて破けてしまいます。ウイルスや病原菌は靴の裏にも付着するため、作業してそのまま外に出ると、靴の裏側から感染を広げてしまうでしょう。

そのため、万が一破れても大丈夫なよう、防護服とは別にシューズカバーも装着します。

もちろん、防護服や手袋同様に、浸透を防ぐため防水・耐油性です。作業後は脱いで処分することで、感染の拡大を防ぎます。

特殊清掃に必要な道具とは

特殊清掃では、服装だけではなく道具にもこだわります。一般的な掃除のように、使う物は雑巾と洗剤だけではありません。

清掃現場では、他にどのような道具が必要となるのでしょうか?

薬剤・洗剤

特殊清掃では、次亜塩素酸がおもに使われます。次亜塩素酸は塩素系漂白剤を主成分としたアルカリ性の物質であり、高い殺菌効果が特徴です。清掃現場の殺菌することで、感染拡大の防止や室内の安全をはかります。

また、汚れの清掃は、洗剤を使い分けることで対処します。汚れには種類があるため、洗剤によって効果が異なるからです。酸性、アルカリ性、中性洗剤を使い分けることで、より効果的な清掃が可能となります。

市販の洗剤を使用することもありますが、洗浄力の高い業務用洗剤や、自社が調合したオリジナルの洗剤を使う場合もあります。

よりきれいに清掃できるかどうかが、企業や作業者の見せ所といえるでしょう。

清掃道具

特殊清掃では、噴霧器を使って殺菌をします。噴霧器とは、圧力を加えて中の液体を噴出するための道具であり、次亜塩素酸を入れて噴出することで、天井も含め部屋の隅々まで殺菌を行ないます。

また、汚れに関しては、一般的な掃除方法とあまり変わりません。ウエスやスポンジなどを用いて、汚れを落とします。もちろん、使用したウエスやスポンジは汚染されており、使用後は防護服などと一緒に処分する必要があるでしょう。

他にも、しつこい汚れにはヘラを使うこともあります。肉片などがこびり付いていると、ウエスやスポンジだけでは落としきれません。そのような場合は、ヘラで削ってから汚れを落とします。

なかには、薬剤では死なないウジ虫も存在し、そのウジ虫を殺処分する場合にも、ヘラが使われます。

オゾン発生器(消臭機)

部屋の消臭には、オゾン発生器が使われます。オゾンによって臭いの成分を分解し、部屋に充満した悪臭を解消します。

窓を開けて換気をすれば良いように思えますが、窓を開けると悪臭が外に広がり近所迷惑となります。室内には病原菌を有したハエなども生息するため、感染拡大を防ぐためにも窓を開けることはできません。

また、家庭で使われるオゾン発生器では消臭しきれないため、より強力な業務用のオゾン発生器を使用します。

特殊清掃では、見た目の汚れだけではなく、臭いの除去も清掃作業の1つとなります。

ゴミ袋など搬出用の道具

清掃作業をしたあとは、ビニール袋に入れて道具を持ち出します。そのまま持ち出してしまうと、感染が拡大してしまうからです。

また、貴重品や遺品を保護する場合も、ビニール袋が使用されます。遺族に渡すための重要な物ではありますが、部屋にあることで臭いが染みついています。そのまま持ち出すと、車やバックに臭いが移ってしまうため、ビニール袋によって隔離した状態で持ち出す必要があるでしょう。

他にも、防護服や手袋などの汚染物は、可燃性のゴミ袋に入れてまとめます。汚染物にはウイルスや病原菌が付着しているため、そのまま捨てるわけにはいきません。

特殊清掃では、道具の消毒や汚染物の焼却処分などの後始末も含め、責任を持って作業する必要があります。

服装や道具が準備できても自分で特殊清掃を行なうべきではない理由

特殊清掃にはお金がかかることから、「自分でやればいい」と思う人もきっといることでしょう。特殊な道具を必要としますが、近年はインターネットで購入することも可能であり、準備は難しくはありません。

ですが、自身で行なう特殊清掃には、さまざまなリスクがあります。うかつに特殊清掃を始めないためにも、自身が行なう際のリスクについて知っておきましょう。

特殊清掃の現場には危険が多い

一つ目の理由は、素人の作業では危険が多いからです。必要な服装や道具の説明でもたびたび感染のリスクについて触れていますが、特殊清掃において、「感染の予防」はとても重要です。

感染によって病気になるのはもちろん、場合によっては病気が原因で死亡するリスクもあります。さらに、自身が病気のキャリアーとなって、身近な人へ感染を広める可能性もあるでしょう。

病気の種類も、赤痢やコレラなどいろいろあります。感染方法や潜伏期間などの特徴も異なり、素人がすべてに対処するのは難しいです。

特殊清掃には、「事件現場特殊清掃士」といった資格があるように、専門の知識が必要な職業です。感染防止・拡大を意識した作業が必要であり、ただ「汚れた現場を掃除する」わけではありません。

取り返しが付かない結果にならないよう、たとえ自分で掃除できそうでも、専門業者に依頼するようにしてください。

特殊清掃は基本的に解体作業もともなう

二つ目の理由は、解体作業も必要になるからです。特殊清掃が必要となる現場は、基本的に血液や腐敗液などが広がっており、長時間放置された汚染液は、木材へと浸透することで床や壁を腐らせてしまいます。

そのため、特殊清掃では表面を掃除するだけではなく、床板や壁紙、場合によっては基盤となる梁からの改修が必要です。

個人での改修はとても大変であり、簡単にできるものではありません。たとえ改修できたとしても、見た目や耐久性が悪くなり、住まいとして問題になるでしょう。

個人での改修工事は、のちに大家や管理会社とのトラブルにつながる可能性があります。元通りのきれいな住まいに改修するためにも、専門業者に依頼してください。

オゾン発生器のパワー不足

三つ目の理由は、市販されているオゾン発生器では、パワー不足だからです。市販のオゾン発生器はペット臭などの消臭を目的とした家庭用であり、正直な話、パワーはそんなに強くありません。

家庭用のパワーでは腐敗臭をはじめとした強烈な臭いの消臭は難しく、オゾン発生器を使用しても臭いが残ってしまうでしょう。

もちろん、インターネットで業務用のオゾン発生器を購入したり、家庭用オゾン発生器でも年単位で消臭し続ければ、個人でも対処は可能です。ですが、コストや労力は見合わず、業者に依頼したほうが簡単に済みます。

清掃によるリスク、解体による手間と合わせて考えても、自分で特殊清掃をすることはおすすめできません。

まとめ
特殊清掃が必要な現場では、感染を意識した服装が望まれます。一般的な服装のままではウイルスや病原菌を防ぐことができず、自身への感染や感染拡大を許してしまうでしょう。

道具に関しても、一般的な清掃よりも強力な薬剤を使用します。オゾン発生器が必要だったりと、必要になる物も多いです。

そのため、特殊清掃を一般的な清掃と同じように考えるべきではありません。専門的な知識だけではなく、解体や改修の技術も必要になるからです。

「餅は餅屋」といった言葉があります。特殊清掃が必要な場合は、たとえ服装や道具を用意できたとしても、専門家に任せるようにしましょう。

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この記事を書いた人

MIND株式会社のアバター MIND株式会社 代表取締役

遺品整理、特殊清掃の際には、ご遺族・ご親族さまの立場に立ち、心に寄り添い、残された品々を丁寧に適切に扱うことを信条としています。

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