孤独死で遺体が溶けるのはなぜ?特殊清掃のプロが解説

孤独死によって発見が遅れた遺体は、ほとんどが損傷の激しい状態です。亡くなっていた環境や発見までの日数によっては、遺体が溶けてしまっていることも少なくありません。

では、なぜ孤独死の遺体は溶けるのでしょうか。今回は、遺体が溶ける理由について詳しく解説していきます。

溶け出した遺体がもたらす被害は甚大で、部屋の壁や床などに汚れや臭いが染み込み、近隣への影響も懸念されます。大量のハエやウジ虫も発生し、個人の力ではどうすることもできません。

遺体が溶け出す仕組みとともに、死後変化の過程や部屋にもたらす影響についてもご紹介します。

目次

孤独死で遺体が溶ける理由

人間の体内にはいくつもの細菌が潜んでいますが、普段は免疫作用によって人体に何の影響もなく過ごせています。しかし、亡くなると徐々に免疫作用が失われていき、細菌によって体の細胞分解が始まります。これが、腐敗です。

腐敗が始まると、全身の毛穴から体液の滲出を起こし、体内では消化器官を中心に腐敗ガスが発生します。次第に全身が緑から紫、黒と変色し始め、体の組織が融解することで骨が露出する状態になります。

このとき、故人の周辺は赤黒い体液の水たまりと化し、強烈な異臭を放ちます。溶け出した体液は床や壁、家財にまで染み込み、場合によっては下の階まで染みることも少なくありません。溶けた遺体には無数のウジ虫が動き回り、部屋にはハエが飛び回ります。

体の肉が残っている部分はぶよぶよしており、触ると脆く取れるような状態です。溶け出した液体の中に毛髪や肉片が残っていることも多々あります。

ただ、溶けて骨が露出しているといっても、完全に肉が溶けてきれいな白骨遺体になるには何年もかかります。イメージとしては、ドロドロの汚れをまとった骨の状態です。白色の骨は見えませんが、ひと目で骨格がはっきりとわかります。

亡くなっている環境にもよりますが、ここまで進行するのに要する時間は2〜3ヵ月ほどです。その間に強烈な死臭で近隣に気付かれたりすることがほとんどですが、まれにここまで進行してしまうケースも見られるのが孤独死の現状です。

孤独死で遺体が溶けるまでに起こる体の変化

基本的に、遺体が溶けるまでは長い時間を要し、その間にはいくつもの死後変化が存在します。その過程を詳しく解説していきます。

死斑

死斑とは、遺体にできる赤い斑点のことです。死後は血液の循環が止まり、30分ほどで全身にまばらな斑点が出始めます。3時間ほど経つとその死斑は床に面している面にまとまります。これは重力の影響によるもので、下にしている面に血液が溜まります。

死後20時間以上経過すると、死斑は集まった場所で固定されます。上になっている部分は青白い色をしており、よく故人の顔色が蒼白だといわれるのはこのためです。

この死斑を参考に死亡推定時刻を調べたり、死亡原因の特定したりします。

死後硬直

死後硬直とは、全身の筋肉の硬化によって体が硬くなり、関節が動かなくなる現象です。死後2時間ほど経過すると、筋肉内にあるグリコーゲンの減少と乳酸の増加によって化学反応が起き、次第に筋肉が硬化していきます。

最初に硬直するのは顎関節です。亡くなったときの状態で口の形が固定されます。次第に全身の筋肉が硬直し始め、8時間ほど経つと手足の先まですべて硬直します。

死後18時間頃が最も強い硬直状態で、力を加えてもほとんど動きません。全身どこを触っても硬い質感で、筋肉質な人ほどこの硬直は強くみられます。逆に、老人や細身の女性は硬直が弱い傾向です。

そのあと、腐敗が進行するとともに24時間ほどで解け始めます。一度硬直すると元のように動かないと思われがちですが、死後48時間経過する頃には生前のように全身動くようになります。触ったときの質感も、やわらかさを取り戻すことがほとんどです。

腐敗

腐敗とは、体の細菌によって細胞分解が起き、体が腐っていくことです。最初に腐敗していくのは胃や腸の消化器系で、死後1時間ほどで腸内細菌が増殖し腐敗していきます。

普段は食べたものを溶かす胃液も、死後は胃や腸そのものを溶かす自己融解を起こします。おもに、赤血球の崩壊や胆汁色素の浸潤などです。遺体が次第に黄色くなっていくのは、これが原因です。

腐敗の影響で腹部は淡い青色に変色し、腐敗ガスが発生します。ガスは全身に広がり、遺体は風船のように膨らみます。次第に赤褐色に変色し、全身の乾燥、体の組織から腐敗した体液を出して融解し始めます。

腐敗性水泡

腐敗性水疱とは、腐敗が進行することで全身に出現する水ぶくれです。液体にはヘモグロビンを含んだ液体と腐敗ガスが含まれています。

重力の影響でおもに床に面している箇所に出現し、破れると大量の液体が流れ出します。破れた表皮は剥がれ落ち、真皮が確認できる状態です。

皮下気腫

皮下気腫とは、皮膚の組織に空気が溜まっている状態のことです。おもに肺や気管から漏れ出たガスなどが原因で起こります。

これは孤独死の遺体に限らず、どの遺体にも発現する現象です。心肺蘇生による肋骨骨折や、肺・気管・気道の損傷、人工呼吸器による空気漏れなども原因としてあげられます。

孤独死で遺体が溶けることによる影響

遺体が溶けることによる影響は甚大です。発見が遅れるほど、その規模は深刻化します。その事例をいくつかご紹介します。

ハエやウジ虫が発生する

腐敗した遺体には、ハエが卵を産み付けます。1回の産卵で100匹以上もの卵を産み、孵化にはそれほど時間を要しません。およそ半日で孵化し、成虫になるまでは2週間程度です。

遺体の発見が遅れるほど、ハエやウジ虫の数は増えていきます。遺体に無数のウジ虫が群がっているのも珍しくありません。ウジ虫は口や毛穴・鼻・耳など全身の穴から体内に入り込み、内側から人体を食していきます。

溶け出した体液の中にもウジ虫やハエが大量に湧き、体液を付着させて移動するため部屋中に汚れが広がる原因です。大量のハエは近隣にまで被害をもたらし、それがきっかけで孤独死の遺体が発見されるケースも少なくありません。

体液が床に染み込む

遺体は長く放置されることで次第に溶け出し、大量の体液が流れ出します。人間の約60%が水分でできているため、体液の量も想像以上です。まるで何杯もバケツの水をひっくり返したかのような量の体液が部屋中に広がります。

溢れ出した体液はフローリングや壁紙に染み込み、建物の基盤となる柱にまで染み込むことがほとんどです。体液による汚れは、市販の洗剤で落ちることはありません。

特にアパートやマンションなどの集合住宅では、階下や隣の部屋にまで体液などが染み込むことも多く、発見が遅れれば遅れるほど汚染箇所は広がっていきます。なかには、建物全体が腐敗被害にあうケースもあるほどです。

腐敗臭が部屋に染み付く

体液が壁や床に染み込むことで、汚れだけでなく臭いも染み付きます。腐敗臭は特殊清掃のなかでも最も厄介な存在です。家財は処分することで臭いの除去につながりますが、床や壁の臭いは汚れを落としただけでは消えることはありません。

また、腐敗臭は部屋のいたるところに染み付きます。家財をはじめ、部屋のドアや窓、エアコンや換気扇、部屋にあるホコリや油汚れなどさまざまです。

一度染み付いた臭いは、時間とともに消えることはまずありません。市販の消臭剤や空気清浄機を用いても効果は一時的で、しばらくすると再度死臭が部屋の外にまで漂います。

また、染み込んだ体液もさらに腐っていくため、壁や床の臭いは日に日に凄まじいものになっていきます。

まとめ

今回は孤独死の遺体が溶ける理由とともに、部屋にもたらす影響についてもご紹介しました。

溶け出した遺体の清掃や消臭を個人的に行なうことは不可能です。強烈な臭いと大量の体液は、見慣れていない人にとっては精神的にも肉体的にも相当なダメージを受けます。その後の生活にも大きな影響をもたらすため、専門業者の力を借りることが必要不可欠です。

専門的な知識の元、迅速に適切な処置を施すことで、汚れはもちろん完全消臭も実現します。建物の原状回復までしっかり行ない、再度人が住める状態にまで戻すことが可能です。

決して自分で解決はせず、必ず専門業者に相談をしましょう。

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この記事を書いた人

MIND株式会社のアバター MIND株式会社 代表取締役

遺品整理、特殊清掃の際には、ご遺族・ご親族さまの立場に立ち、心に寄り添い、残された品々を丁寧に適切に扱うことを信条としています。

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